「ChatGPTや効率化の話は、もう十分に聞いた」——そう感じる経営者が増えています。AIを使える会社は、もう珍しくありません。これからの経営で問われるのは、AIを使えるかどうかではない。それでも、いざ本格導入となると、気にかかることはある。試験導入のまま終わらないか。変化の速いAIは、2〜3年で古びて使われなくなるのではないか。現場は本当に使うのか。どこまで投資し、どこで見直すか。
しかも、AIはもう「案を出す」だけの道具ではありません。いまや、発注や送信といった操作までを、人を介さず自分で実行し始めています。だからこそ、どの業務判断を任せ、どの操作までを人を通さず実行させ、どこから人間が確認するのか。起きてから考えるのでは、間に合いません。
こうした不安をたどっていくと、もっと答えにくい問いに行き着きます。AIに任せた判断が外れたとき、「AIがやった」では済みません。最後に説明し、責任を負うのは経営者です。その範囲を、いま社内の誰が、どう決めているでしょうか。
開発を外部に委ねても、判断の責任までは渡せない。ベンダーが抜けた後も、自社で回り続ける設計になっているか。そして金融機関・監査・行政から「御社はAIに何をさせ、誰が責任を持つのか」と問われたとき、自社の設計として、筋の通った答えを返せるでしょうか。
問いの形は違っても、根っこは同じです。AIに何をどこまで任せ、だれが判断し、だれが責任を負うか。本研究会が扱うのは、そこです。
毎回ばらばらの話を聞く会ではありません。最終成果物は、八つの項目からなる「自社版AI責任設計シート」。第1回で5項目、第2回で7項目、第3回で8項目——回を重ねるごとに、自社に残っていた「空欄」がひとつずつ埋まっていきます。この設計が、経営会議でも、金融機関・監査・行政に問われても、そのまま答えになります。
全3回を通して、ある地方の精密部品メーカーが、AI導入・外注・運用でつまずき、立て直していく一つの実例が「通し事例」として流れます。抽象論ではなく、具体的な場面と判断で、自社に置き換えながら進みます。
議論の重心は、いまや「どう使うか」から「どう責任を持って組み込むか」へ移りました。規制・国内取引・金融監査という三つの波は、海外取引の有無に関係なく、必ず取引先を経由して降りてきます。そのAIを「何のために使うのか」を売上・コスト・在庫・リスクのどれか一つに絞り込み、業務のどこまでを任せ、どこから人が確認するか、その判断を支えるデータが本当に自社で取り続けられるかを点検します。犯人のいない事故を、起きる前に、誰がどこで引き受けるかを決める出発点です。
後半は、実際に「任せる」場面へ踏み込みます。カナダの航空会社が、自社サイトのAIチャットボットの誤案内で法的責任を問われた実例から、AIは判断を消さない、別の場所へ移すだけ——移した先が空欄なら、その空欄が事故になることを見ます。人はAIの出した数字に引きずられ、現場は空気に逆らえない。だから確認を個人の勇気に頼らず、職務として差し戻せる仕組みにする。業務を判断の単位に分解して「任せてよい判断・任せてはいけない判断」にラベルを貼り、段階投資のチェックポイントで「進む・調整する・止める」を事前に定め、最終判断者と説明責任者を、それぞれ一人ずつ指名します。
開発を外に出しても、責任も主導権も外注できません。「丸投げ」がいちばん危ない。作る人に「作るべきか・できたか」を採点させない——作る・確かめる・使うの三者を分け、独立した目で技術品質を確かめる線を、契約を結ぶ前に引きます。「実行する人」と「責任を負う人」を分けるRACIの一枚も、ここで持ちます。
提案段階で確かめる五つの問いが、そのまま持ち帰る「ベンダー評価・責任分界チェックリスト」になります。さらに、一社に縛られないよう設計書を自社に残し、最悪に備えて成果物を第三者に預けておく。データ・技術・成果物の三層で権利を切り分け、権利の帰属と保守費用の負担を、別々に設計します。
AIは黙って劣化します。こわいのは落ちることではなく、止まらないこと——動き続けたまま、気づかれずに精度が下がっていく。誰が、どの指標で、どの頻度で気づくかを設計し、現場で観測できる「代理のサイン」で監視します。手を入れるときは検知・準備・実行・承認の四工程に分け、直す人に「直ったか」を採点させない。どこまで落ちたら止めるかの撤退ラインを、動かす前に言葉にしておきます。
技術は世代交代しても、データと業務知識は資産として残る。そして第1回・第2回で作った部品を一つに束ね、自社版AI責任設計シートを完成させます。翌日から、金融機関にも監査にも社内にも、同じ設計で説明できる状態にして持ち帰っていただきます。
最後に手元に残るのは、自社のAIを「だれの責任で、どこまで動かすか」を定めた設計。
つまり、自社版のAI責任設計です。
AIに何を判断させ、何かが起きたとき誰が責任を取るかを、自社の制度として設計する。その力を扱います。
国や国際機関が示すAIガバナンスの基準を、自社が実際に運用できる責任・判断・監査の仕組みへ翻訳する。その方法論を、本研究会ではAI責任設計と呼びます。
金融機関・監査・行政にも説明できる言語で、判断範囲・責任の所在・説明可能性を整理します。
ツールを使える経営者ではなく、
AIを設計し、運用できる経営者のために。
本研究会はオフライン開催・ご本人参加を基本としつつ、一席を、会社として無理なくお使いいただける設計にしています。
本研究会は、一般社団法人笹川経済支援機構のもとで、AI責任設計研究会 主宰 松岡が内容を設計し、講義を担います。各回には理事長も出席します。
「AIの飼い主は、人間である。」
AIの進歩は目覚ましく企業経営において、その活用は避けて通れない大きなテーマとなっています。しかしながら、AI導入をベンダーや社内の担当者に任せっぱなしにし、世の中に溢れる情報に翻弄されている経営者は想像以上に多い。そこで、一般社団法人笹川経済支援機構では、「AI責任設計研究会」を発足しました。
主宰は、海外のAI専門家チームと連携し、AI責任設計の実務に取り組んでいる人物。陸上自衛隊において部隊指揮・幕僚勤務に従事し、PKO(ハイチ・南スーダン)にも参画し、海外のAI規制・技術動向の一次情報(英語原文)に日常的に触れており、いち早く海外の動きをアップデートできる稀有な日本人です。
本研究会では月一回・三ヶ月をワンクールとし、自社の事業課題に応じて人間とAIの役割・責任分担を整理し、経営者が判断・発注・管理できる環境を整えるための「思考の場」です。自社の制度設計として持ち帰っていただくワークショップを組み込むなど、国内では他に類を見ない質の高きコミュニティを目指します。経営者がじっくりと自己対話を重ねながら、安全な投資及び継続可能な競争力に転換していき、更にはAIとの付き合い方がしっかりと見定められる経営者を輩出していきます。
昭和43年東京生まれ。玉川大学卒業後カナダへ留学。株式会社日本ボートサービス代表取締役を経て、現在は株式会社笹川能孝事務所代表取締役、経済結社SSA主宰を務める。平成24年より一般社団法人笹川経済支援機構理事長。『財界人文芸誌ほほづゑ』同人。著書に『笹川流』『日本人最後のファンタジスタ 〜非暴力非服従の人〜 笹川良一物語』ほか。令和7年、東久邇宮国際文化褒賞受賞。
「最後に残るのは、経営者ひとり。」
人間も、組織も、どうすれば望む方向へ進めるのか。理想のフローを描くのは容易でも、それを動かすのは生身の人間です。正しいと分かっていても言えない、波風を立てたくない——そうした一人ひとりを束ね、望む方向へ導く。それが、経営者という仕事の最も骨の折れるところだと考えています。
いま私たちは、AIという技術を手にしました。その適否が、会社の未来を左右します。AIの設計・開発・運用には多様なアクターが関わり、失敗時に起きるのは、部品の故障ではなく判断の誤りです。誰か一人のミスではなく、全員が正しく仕事をした結果として現れることがある。現場任せでは、最後は経営者ひとりが全責任を負うことになりかねません。
だから私は、開発会社ではなく発注者である経営者の側に立ち、AIに何を判断させ、どこで人が確認し、誰が責任を負うかを、自社の制度として設計することに取り組んでいます。目指すのは、AIを使える経営者ではありません。AIを設計し、責任を持って動かせる経営者です。本研究会を、その確かな入口とします。
昭和54年神奈川生まれ。神奈川大学経営学部卒業後、陸上自衛隊幹部候補生学校を経て陸上自衛隊幹部として勤務。指揮幕僚課程在籍中に退官。平成29年、合同会社データリストを設立し代表に就任。AIに何を判断させ、どこで人間が確認し、誰が責任を負うかを企業の制度として設計する手法「AI責任設計」を体系化。令和8年、一般社団法人笹川経済支援機構「AI責任設計研究会」主宰。
第1期・第1回にご参加いただいた経営者の皆さまからの評価です。回答者は全員が現役経営者で、業務でAIを活用されている方々。
松岡様のお話には大変説得力がありました。AIやITの知識だけでなく、組織運営や責任体制の実務経験を背景とした話には重みがあり、「AIを導入すること」ではなく「AIを活用する組織として何を設計しなければならないか」という視点が一貫していました。
最も印象に残ったのは「AIに何を判断させ、誰が責任を負うのか」というテーマです。一見AIのテーマですが、むしろ「人間の責任設計」に関する問いとして響きました。
AIを使いこなすために気をつけるべき点に気づけたのがよかった。初回ということもあり、今後どのように進んでいくのか楽しみです。
未来にAIによるトラブルが増えると予想されるなか、その対策を今から問うことの意義を感じました。あっという間の90分でした。次回も楽しみにしております。
話が分かりやすく、内容が頭に入ってきました。
2026年6月23日開催・第1期 第1回参加者アンケート(4名回答)およびご提出いただいた感想文より。個人が特定される氏名は掲載していません。
●各回には、笹川経済支援機構 理事長も出席します。
AI導入は、規模によっては数百万から数千万円の投資になります。方向を誤れば、その大半が回収できないまま終わりかねません。全3回 36,000円は、その判断を誤らないために、自社で押さえるべき勘所を、自社版の設計シートにまとめ上げるための費用です。